コラム
腰痛に鍼灸は効果がある?仕組み・持続時間・治療のポイント|大磯・平塚
鍼灸・施術
「腰痛に鍼は本当に効果があるの?」
「鍼をすると、なぜ痛みが軽く感じることがあるの?」
「施術を受けた後、効果はどのくらい続くの?」
腰痛で鍼灸を検討している方の中には、
このような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
腰痛は非常に身近な症状ですが、
原因や痛みの出方は一人ひとり異なります。
医療機関で行われる薬物療法やリハビリテーション、
運動療法などとともに、
鍼灸を選択肢の一つとして利用する方もいます。
鍼灸は長い歴史を持つ施術方法ですが、
現在では伝統的な東洋医学の考え方だけでなく、
痛みの感じ方に関わる神経系への刺激などについても
研究が行われています。
この記事では、
腰痛の基本的な考え方から、
鍼灸で使用する鍼、
施術の流れ、
痛みに対して考えられている作用、
効果の持続時間、
そして腰痛で鍼灸を受ける際に知っておきたいポイントまで
分かりやすく解説します。
腰痛はなぜ起こる?原因は一つではありません
腰痛は一つの病名ではなく、
腰部周囲に感じる痛みや重さなどを表す症状です。
腰痛の中には、
腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、
医療機関で原因となる病気が診断されるものがあります。
一方で、
画像検査などを行っても
痛みを一つの原因だけで説明することが難しい腰痛もあります。
そのため、
「腰が痛い=この筋肉が悪い」
「骨が変形している=それだけが痛みの原因」
と単純に考えないことが大切です。
筋肉・関節・椎間板・神経などさまざまな組織が関係します
腰には、
椎骨、椎間板、関節、靱帯、
筋肉、神経など
多くの組織があります。
腰痛では、
こうした組織の一つまたは複数が
症状に関係している場合があります。
また、
臀部から脚に痛みやしびれがある場合には、
神経が関係していることもあります。
腰痛の施術を考えるためには、
どの場所が痛むのかだけではなく、
どのような動作で症状が変化するのか
を確認することも重要です。

腰痛が始まった時期や痛み方、医療機関での診断内容などを確認してから施術を考えます
急性腰痛と慢性腰痛では考え方が異なります
腰痛は、
症状が続いている期間によっても
考え方が変わります。
急に起こる腰痛
重い物を持った時や、
前かがみになった時などに
突然腰へ強い痛みが出る場合があります。
一般的に「ぎっくり腰」と呼ばれるものも、
急性腰痛の一つです。
強い痛みがあるからといって
必ず重大な損傷があるとは限りませんが、
神経症状などを伴っていないか確認する必要があります。
長期間続く慢性腰痛
腰痛が長く続いている場合には、
腰そのものの状態だけではなく、
活動量や睡眠などさまざまな要素を確認することがあります。
慢性痛の一部では、
痛みが長期間続く中で、
痛みを感じたり調節したりする神経系の働きにも
変化が生じる場合があると考えられています。
これは
「気のせいで痛い」
という意味ではありません。
本人が感じている痛みは実際の症状です。
睡眠・ストレス・不安なども痛みの感じ方に関係することがあります
慢性腰痛では、
睡眠不足や疲労が強い日に
痛みをいつも以上に強く感じる方もいます。
また、
「動いたらもっと悪くなるのではないか」
という不安から活動量が少なくなることもあります。
そのため慢性腰痛では、
身体だけ、心理面だけと分けるのではなく、
生活全体への影響も含めて考えること
が大切です。
腰痛で医療機関を優先したい症状
腰痛に鍼灸を利用する方はいますが、
すべての腰痛を鍼灸院だけで対応するわけではありません。
- 脚の筋力低下が進んでいる
- 歩きにくさが急に強くなった
- 排尿・排便がしにくい、または失禁がある
- 会陰部周囲の感覚がおかしい
- 発熱を伴う強い腰痛がある
- 転倒・事故後に強い腰痛が続いている
- 安静にしていても強い痛みが続く
- がんなどの既往があり、新しい腰痛が出ている
- 原因の分からない体重減少などを伴う
特に進行する筋力低下や
排尿・排便の異常などがある場合には、
鍼灸だけで様子をみず、
速やかに医療機関へ相談することが重要です。
鍼灸治療ではどのような鍼を使う?
以前の記事では
「金属製の鍼やシリコン製の鍼」
と説明していましたが、
一般的な鍼治療で使用される鍼は
主にステンレス製です。
太さや長さにはさまざまな種類があり、
施術する場所や目的、
患者さんの体格や刺激への反応などによって使い分けます。
当院でも、
身体の状態を確認しながら
使用する鍼や刺激量を調整しています。
鍼は太ければ効果が高いわけではありません
「太い鍼を深く刺した方が効く」
と思われることがありますが、
刺激が強ければ強いほどよいというものではありません。
筋肉へある程度の深さまで鍼を行う場合もあれば、
浅い刺激を使用する場合もあります。
その方の身体の状態と施術目的に合わせて
刺激量を決めることが重要です。
腰痛に対する鍼灸施術の流れ
1.問診・カウンセリング
最初に、
腰痛の状態について詳しくお伺いします。
- いつから腰痛があるか
- 突然始まったのか、徐々に始まったのか
- どこが痛むのか
- どの動作で痛みが出るのか
- 脚への痛み・しびれの有無
- 筋力低下がないか
- 整形外科などでの検査・診断内容
- 服用している薬
- 仕事や日常生活への影響
まず鍼灸で対応してよい状態なのかを
確認することが大切です。
2.身体の動きを確認
可能な範囲で、
前屈・後屈、
身体をひねる動作、
立ち上がり、
歩行などを確認します。
痛みが強い場合に
無理に動いていただくことはありません。
3.身体の状態に合わせて鍼灸
腰や臀部などへ鍼を行う場合もあれば、
身体の状態に応じて
手足など腰から離れた場所へ鍼を行うこともあります。
施術後には、
可能であれば再び身体を動かしていただき、
動かしやすさや痛みの感じ方を確認します。

腰痛では身体の状態を確認し、必要に応じて腰や背部などへの鍼を行います(施術イメージ)
鍼治療はなぜ腰痛に使われるのか?
鍼刺激が痛みに対してどのように作用するのかについては、
現在もさまざまな研究が行われています。
一つの仕組みだけで
鍼治療の作用をすべて説明できるわけではありません。
鍼によって皮膚や筋肉などへ刺激を加えると、
その刺激は末梢神経を介して
脊髄や脳へ伝わります。
そこで起こる神経系の反応や
痛みを調節する仕組みなどが、
鍼刺激と痛みの感じ方との関係として研究されています。
身体には痛みを調節する仕組みがあります
痛みは、
単純に患部から脳へ電気信号が届くだけの仕組みではありません。
脳や脊髄には、
痛みの情報を調節するさまざまな仕組みがあります。
鍼刺激と、
こうした内因性の痛み調節機構との関連について
研究が進められています。
内因性オピオイドと鍼刺激
鍼と痛みについて説明するときに、
「エンドルフィン」という言葉を
聞いたことがあるかもしれません。
人の身体には、
エンドルフィンやエンケファリンなど
内因性オピオイドと呼ばれる
痛みの調節に関係する物質があります。
鍼刺激とこれらの物質との関連は、
基礎研究を中心に長く研究されてきました。
ただし、
「鍼を刺すとモルヒネが出て、
痛みの神経をブロックする」
と説明するのは正確ではありません。
エンドルフィンとモルヒネは同じものではありません
モルヒネは医療でも使用される
オピオイド鎮痛薬の一つです。
一方、
エンドルフィンなどは
身体の中で作られる内因性オピオイドです。
働きに共通する部分があるため比較されることがありますが、
「鍼をすると身体の中にモルヒネが出る」
という意味ではありません。
鍼と筋肉の緊張・局所の反応
腰痛がある方では、
腰や臀部の筋肉に
張りや圧痛を感じることがあります。
その場合、
身体の状態に応じて
筋肉周囲へ鍼を行うことがあります。
鍼刺激後に、
筋肉の緊張や局所の循環などに
変化がみられることについても研究されています。
ただし、
「血流を良くして老廃物や疲労物質を流せば
腰痛が治る」という単純な仕組みではありません。
施術直後に楽になっても「腰が治った」とは限りません
鍼灸施術後に、
「前屈しやすくなった」
「立ち上がる時が楽になった」
「痛みが軽く感じる」
という変化を感じる方もいます。
こうした変化は、
施術の経過を見る大切な材料です。
しかし、
痛みが軽くなったことと、
椎間板ヘルニアなどの構造的な問題そのものが
治ったことは同じではありません。
鍼灸の効果はどのくらい持続する?
腰痛で鍼灸を受けた方から、
「この効果は何日くらい続きますか?」
と聞かれることがあります。
これは、
一律に「○日間続く」と決めることはできません。
腰痛が始まってからの期間、
原因となる疾患、
仕事や活動量、
睡眠、
身体の状態などによって大きく異なります。
施術直後だけを見るのではなく、
翌日以降の生活でどうだったかを確認することが大切です。
経過を見る時は「何日楽だったか」だけではありません
- 痛みの強さが変化したか
- 朝起きる時が楽になったか
- 立ち上がりやすくなったか
- 歩ける距離が変わったか
- 仕事中の負担が変わったか
- 痛みを気にしない時間が増えたか
- 脚の痛み・しびれに変化があるか
痛みの数字だけではなく、
日常生活でできることが増えているか
も重要な評価になります。
鍼灸だけで再発を防げるわけではありません
以前の記事では、
鍼治療の作用が続くことで
腰痛の再発予防にも役立つと説明していました。
しかし、
鍼灸を受けていれば腰痛の再発を防げる
と保証することはできません。
慢性的な腰痛では、
施術だけではなく、
身体活動や日常生活についても
一緒に考えることが大切です。
無理のない範囲で身体を動かし、
必要に応じて運動や生活習慣を見直していきます。
東洋医学では腰痛をどのように考える?
ここまでは主に、
現代的な痛みの考え方から
鍼灸について説明してきました。
鍼灸には、
東洋医学に基づくもう一つの考え方があります。
東洋医学では古くから、
「経絡」「気」「血」などの概念を用いて
身体の状態を考えてきました。
ただし、
経絡や気血は現代医学の神経や血管と
そのまま同じものではありません。
東洋医学の体系の中で、
身体全体の状態を考えるために
用いられてきた概念です。
たかはし治療院で行う腰痛への鍼灸
当院では、
腰痛だからといって
全員に同じ場所へ同じ鍼を行うわけではありません。
問診、
身体の動き、
脚への症状、
医療機関での診断内容などを確認したうえで
施術方法を考えます。
- 経絡治療
- YNSA(山元式新頭鍼療法)
- 腰・臀部などへの鍼
- 身体の状態に応じた手足への鍼
- あん摩マッサージ指圧
腰だけを見るのではなく、
現在の身体の状態を確認しながら
施術を組み立てることを大切にしています。
経絡治療
経絡治療では、
脈や腹部などを確認し、
東洋医学的にその日の身体の状態を整理します。
腰痛でも、
腰だけではなく
手足など離れた場所にある経穴を
使用することがあります。
使用する経絡や経穴は、
身体の状態を確認して決めます。
YNSA(山元式新頭鍼療法)
身体の状態によっては、
YNSAを組み合わせることがあります。
YNSAは、
Yamamoto New Scalp Acupunctureの略で、
山元敏勝医師によって考案された頭皮への鍼療法です。
腰痛の場合でも、
身体の反応を確認して
必要な頭皮の施術点を選択します。
可能な場合には施術前後に
前屈・後屈・立ち上がり・歩行などを確認し、
その時点での変化を施術の参考にします。

身体の状態によっては、腰痛でもYNSAによる頭部への鍼施術を組み合わせます(施術イメージ)
腰痛では鍼灸とともに日常生活も大切
施術を受ける時間より、
日常生活を送っている時間の方が長いため、
腰痛ではセルフケアも重要です。
同じ姿勢を長時間続けない
デスクワークや車の運転が多い方は、
「常に正しい姿勢を保つ」ことにこだわりすぎるより、
適度に姿勢を変えることを意識しましょう。
時々立ち上がる、
短時間歩くなど、
身体を動かす時間を作ることも一つの方法です。
痛みのない範囲で身体を動かす
腰痛があると、
身体を動かさない方が安全だと考える方もいます。
症状によって安静が必要な場合はありますが、
医療機関から特別な指示がない慢性腰痛では、
無理のない範囲で日常活動を続けることも大切です。
ウォーキングなど、
自分が続けやすい活動から始めてみましょう。
痛みを我慢して運動しない
「腰痛には運動がよい」と言われても、
痛みを我慢して強いトレーニングをする必要はありません。
運動中に脚のしびれや痛みが強くなる場合などは中止し、
必要に応じて専門家へ相談してください。
腰痛と鍼灸についてよくあるご質問
Q. 腰痛に鍼灸は効果がありますか?
慢性的な腰痛などで、
鍼灸が選択肢の一つとなる場合があります。
ただし、原因や症状には個人差があり、
すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。
Q. 鍼の効果は何日くらい続きますか?
一律に何日間とは決められません。
施術直後だけでなく、
翌日以降の痛みや動き、
仕事・日常生活での状態も確認します。
Q. 腰痛なら腰だけに鍼をするのですか?
腰や臀部へ鍼を行うことはありますが、
身体の状態によっては
手足への鍼や経絡治療、
YNSAなどを組み合わせる場合があります。
Q. 鍼を深く刺す方が効果がありますか?
深い鍼や強い刺激ほど効果が高いわけではありません。
施術部位、症状、体格、刺激への反応などによって
適切な刺激量は異なります。
Q. 椎間板ヘルニアでも鍼灸を受けられますか?
医療機関での診断内容や症状を確認したうえで
鍼灸を行う場合があります。
鍼灸によって飛び出した椎間板そのものを
元通りにするという意味ではありません。
Q. 病院と鍼灸のどちらを選べばいいですか?
どちらか一方を選ばなければならないわけではありません。
必要な診断・検査・治療を医療機関で受けながら、
状態に応じて鍼灸を併用する方法もあります。
Q. 何回くらい通えばいいですか?
腰痛が始まってからの期間、
診断内容、
脚への症状、
仕事や生活環境、
施術後の経過によって異なります。
最初から一律に回数を決めるのではなく、
経過を確認しながら相談します。
まとめ|腰痛への鍼灸は身体の状態を確認しながら取り入れる
腰痛には、
筋肉、関節、椎間板、神経など
さまざまな組織が関係する可能性があります。
また慢性的な腰痛では、
痛みを感じる神経系の働きや、
睡眠・疲労・活動量なども
症状に影響する場合があります。
鍼灸については、
末梢神経への刺激、
脳や脊髄での痛みの調節、
内因性オピオイドなど、
さまざまな仕組みとの関係が研究されています。
ただし、
鍼をすればすべての腰痛が治る、
一度の施術で長期間効果が続く、
腰痛の再発を防げるというものではありません。
現在の症状、
医療機関での診断、
身体の動き、
日常生活への影響などを確認し、
必要な方法を組み合わせることが大切です。
たかはし治療院では、
経絡治療・YNSA・身体への鍼・
あん摩マッサージ指圧などを、
その日の身体の状態に合わせて行っています。
腰の痛む場所だけでなく、
身体の動き、脚への症状、
医療機関での診断内容などを確認しながら、
その日の身体に合わせて施術を行います。
たかはし治療院
院長 高橋道明




