コラム
ミトコンドリアとは?ATP・疲労との関係と健康を支える生活習慣|電子・イミューノパワーも解説
健康と栄養
「しっかり寝ているのに疲れが取れない」
「以前より体力が落ちたように感じる」
「最近、ミトコンドリアという言葉をよく聞くけれど、健康とどんな関係があるの?」
健康や美容の分野で、
近年よく聞かれるようになった言葉の一つが
「ミトコンドリア」です。
ミトコンドリアは私たちの細胞の中に存在し、
生命活動に必要なエネルギーを作るうえで
非常に重要な役割を担っています。
そのため、
「ミトコンドリアを元気にすれば疲れが取れる」
「ミトコンドリアを活性化すれば免疫力が上がる」
「電子を補えば細胞が元気になる」
といった説明を目にすることがあります。
しかし、
ミトコンドリアが重要であることと、
あらゆる疲労や病気をミトコンドリアだけで説明できることは別です。
この記事では、
ミトコンドリアとは何なのか、
ATPや電子伝達系とはどのような仕組みなのか、
運動・食事・睡眠との関係、
そして「電子不足」「電子を補う」という健康情報を
どのように考えればよいのかまで、
できるだけ分かりやすく解説します。
ミトコンドリアとは?
私たちの身体は、
膨大な数の細胞によって作られています。
その多くの細胞の中に存在する小さな構造の一つが
ミトコンドリアです。
ミトコンドリアはよく
「細胞のエネルギー工場」
と表現されます。
これは、
私たちが食事から得た栄養素と酸素などを利用しながら、
生命活動に必要な
ATP(アデノシン三リン酸)
を作る重要な役割を担っているためです。

細胞の中でエネルギー産生に重要な役割を担うミトコンドリア(イメージ)
すべての細胞にミトコンドリアがあるわけではありません
一般には
「身体の細胞にはミトコンドリアがある」
と説明されますが、
実際には細胞によって数や性質が異なります。
例えば、
成熟した赤血球にはミトコンドリアがありません。
一方、
多くのエネルギーを必要とする組織では、
ミトコンドリアが重要な働きを担っています。
ATPとは?私たちの身体を動かすエネルギー
ATPは、
アデノシン三リン酸
という物質です。
ATPは、
細胞がさまざまな活動を行う際の
エネルギーの受け渡しに利用されます。
- 筋肉を収縮させる
- 神経や細胞の機能を維持する
- 物質を細胞内外へ運ぶ
- さまざまな生体反応を進める
- 細胞の状態を維持する
多くの細胞では、
ミトコンドリアで行われる
酸化的リン酸化が
ATP産生に重要な役割を持っています。
ただしATPはミトコンドリアだけで作られているわけではなく、
細胞質で行われる解糖系などでも作られます。
ミトコンドリアは健康に重要。でも「健康のすべて」ではありません
ミトコンドリアが正常に機能することは、
私たちの身体にとって非常に重要です。
しかし、
ここから
「ミトコンドリアさえ元気にすれば健康になる」
と考えるのは飛躍があります。
私たちの健康は、
神経系、
内分泌系、
免疫系、
循環器、
呼吸器、
消化器、
筋骨格系など
多くの仕組みによって支えられています。
ミトコンドリアはその重要な一部分ですが、
健康を決める唯一の「土台」ではありません。
「ミトコンドリアが元気なら免疫力が上がる」とは言えません
免疫細胞が働くためにもエネルギーは必要ですし、
免疫細胞の代謝とミトコンドリアの関係についても
研究されています。
しかし、
ミトコンドリアを活性化すれば
免疫力が上がって病気を予防できる、
という単純な関係ではありません。
「免疫力」という言葉自体も、
一つの数値で高い・低いと表せるものではありません。
自律神経が整うとも一律には言えません
ミトコンドリアと神経細胞の働きには関係があります。
しかし、
ミトコンドリアが元気になる
→自律神経が整う
→体調が良くなる
という一直線の仕組みで身体を説明することはできません。
「疲れが取れない=ミトコンドリアが弱っている」ではありません
今回の元記事で特に修正したいのが、
慢性疲労とミトコンドリアを
直接結びつけていた部分です。
確かに、
エネルギー代謝にミトコンドリアが重要なのは事実です。
しかし、
「寝ても疲れが取れない」
「朝からだるい」
という症状だけで、
ミトコンドリア機能が低下していると判断することはできません。
- 睡眠不足・睡眠障害
- 仕事や生活による疲労
- 貧血
- 甲状腺などの病気
- 感染症や炎症性疾患
- 心臓・肺などの病気
- 薬の影響
- 精神的な負担など
疲労が長く続く場合には、
「ミトコンドリアが疲れている」と自己判断せず、
必要に応じて医療機関で原因を確認することが大切です。
ミトコンドリアを考える前に大切な4つの生活習慣
ミトコンドリアだけを狙った特別な健康法を行うより、
まずは全身の健康を維持する基本を整えることが重要です。
1.運動
運動とミトコンドリアの関係は、
比較的よく研究されている分野です。
特に骨格筋では、
継続的な運動によって
ミトコンドリアの量や機能に適応が起こることが知られています。
ウォーキング、
筋力トレーニングなど、
体力に合わせた身体活動を続けることは
全身の健康維持にも役立ちます。
ただし、
疲労が非常に強い方や病気の治療中の方が
無理に運動をする必要はありません。

体力に合わせた運動を継続することは、健康維持の基本の一つです(イメージ)
2.食事
ミトコンドリアは、
糖質や脂質などから得られる物質を利用しながら
ATP産生に関わっています。
そのため、
「ミトコンドリアに効く食品」を探すより、
まず十分なエネルギーと必要な栄養素を摂ることが大切です。
特定のサプリメントだけで
ミトコンドリアを活性化できると考えないこと
も重要です。
3.睡眠
睡眠は、
身体と脳の健康を維持するための重要な時間です。
元記事では
「睡眠中に身体が修復・回復・再生し、
ミトコンドリアも回復する」
と説明していました。
睡眠と細胞の代謝には関係がありますが、
睡眠を取ればミトコンドリアそのものが修復されて
不調が改善する、と単純には説明できません。
4.ストレスとの付き合い方
長期間の強いストレスは、
睡眠や食欲など
さまざまな面に影響することがあります。
リラックスできる時間を作る、
軽く身体を動かす、
趣味の時間を持つなど、
自分に合った方法を取り入れてみましょう。
ただし、
「ストレス→自律神経が乱れる→ミトコンドリアが弱る」
という一つの経路だけで不調を説明することはできません。
身体は「電気」で動いている?電子との関係
私たちの神経や筋肉では、
電気的な現象が重要な役割を持っています。
例えば神経細胞では、
ナトリウムやカリウムなどのイオンが
細胞膜を移動することによって
電位変化が生じ、
神経信号が伝わります。
その意味では、
身体の機能を理解するうえで
「電気的な現象」が重要なのは事実です。
ただし「神経の電気信号=電子が身体を流れている」ではありません
ここは混同されやすいポイントです。
神経の電気信号は、
主に細胞膜を隔てたイオンの移動によって生じます。
家庭の電線の中を電子が流れるのと
まったく同じ仕組みで神経が動いているわけではありません。
ミトコンドリアでは本当に「電子」が重要です
ここで少しややこしいのですが、
ミトコンドリアのATP産生に
電子の受け渡しが重要なのは事実です。
ミトコンドリアの内膜には
電子伝達系と呼ばれる仕組みがあります。
食事から得られた栄養素を代謝する過程で生じた
NADHやFADH2などから電子が受け渡され、
最終的には酸素が電子を受け取ります。
この過程で形成される
プロトンの濃度差を利用して
ATPが作られます。
つまり、
電子伝達系がATP産生に重要
という説明までは正しいのです。
ミトコンドリア内部で電子伝達が行われていることと、
身体の外から電子を与えれば
その電子が電子伝達系へ入り、
ATPが増えるということは同じではありません。
酸化・還元・活性酸素とは?
化学では、
電子の受け渡しによって起こる反応を
酸化還元反応と呼びます。
基本的には、
電子を失うことを酸化、
電子を受け取ることを還元
と表現します。
私たちの身体でも、
こうした酸化還元反応が
生命活動のさまざまな場面で起きています。
活性酸素はすべて悪者ではありません
活性酸素種は、
代謝の過程などで生じます。
過剰な酸化ストレスは
細胞に影響する可能性がありますが、
活性酸素種は身体の情報伝達や
免疫反応などにも関係しています。
「活性酸素=毒」
「全部除去すれば健康になる」
という考え方ではありません。
「身体の電子不足が不調を起こす」という説明について
健康情報の中では、
「現代人は電子不足になっている」
「電子が不足すると活性酸素が増える」
「電子不足によって疲労や免疫低下が起こる」
という説明を見かけることがあります。
しかし、
一般的な臨床医学で
「全身の電子不足」という状態が
疲労などの原因として診断されているわけではありません。
「電子が足りないから疲れる」
「電子を補えば回復力が上がる」
と一律に説明することは難しいのが現状です。
酸化還元反応や電子伝達系という
本来の生化学の仕組みと、
健康情報として使われる
「電子不足」という表現は
分けて考える必要があります。
「電子を補う=抗酸化」でもありません
化学反応として電子の授受が重要だからといって、
身体の外から電子を与えるだけで
活性酸素がすべて無害になったり、
細胞が若返ったりするとは限りません。
基礎的な化学の説明から、
人に対する治療効果を直接導くことはできません。
「外からサポートする」という考え方について
元の記事では、
運動・食事・睡眠だけでは足りない人に対して、
点滴、温熱、電子機器などで
「外からミトコンドリアをサポートする」
という説明をしていました。
この部分についても、
それぞれを分けて考える必要があります。
点滴について
点滴は医療機関で、
患者さんの状態や治療目的に応じて行われる医療行為です。
一般的に「ミトコンドリアへ栄養を届けるための方法」
として必要になるものではありません。
温熱について
身体を温めることで
心地よさやリラックスを感じる方もいます。
しかし、
身体を温めれば酸素供給が増えて
ミトコンドリアが活性化する、と一律には説明できません。
イミューノパワーを利用する場合の考え方
イミューノパワーは、
「電子」に着目して作られている健康関連機器です。
ただし、
健康機器を紹介するときには、
機器のコンセプトと、
人に対して科学的・臨床的に確認されている効果を
分けて考えることが大切です。
例えば、
ミトコンドリア内で電子伝達系が働いていることは
生化学的に確立した仕組みです。
しかし、
機器から身体へ電子を供給することで、
その電子がミトコンドリアの電子伝達系に利用され、
ATP産生が増えることまで
同じ意味になるわけではありません。

健康機器を利用する場合には、目的・使用方法・注意事項を確認したうえで使用することが大切です(イメージ)
病気を治す機器として紹介しない
イミューノパワーを使用する場合にも、
「免疫力を上げる」
「ミトコンドリアを活性化する」
「病気を治りやすくする」
「回復力を底上げする」
などの効果を保証することはできません。
病気の診断や治療の代わりではなく、
健康管理を考える際の補助的な機器として
位置づけることが大切です。
「日本製だから安全」とは限りません
製造国が日本であることと、
すべての方が安全に使用できることは別です。
機器には、
使用してはいけない方や
使用上の注意が設定されている場合があります。
特に体内植込み型医療機器などを使用している方は、
必ず事前にメーカーの最新の使用上の注意を確認してください。
医療機関で治療中の方へ
病気の治療中に健康機器を利用する場合でも、
現在受けている治療を
自己判断で中止・変更する必要はありません。
治療中の病気がある場合には、
医師による診断・治療を優先したうえで、
補助的なものとして考えてください。
疲れが取れない時に「ミトコンドリア」だけを見ない
ミトコンドリアは身体にとって重要です。
しかし、
慢性的な疲労、
めまい、
不眠、
動悸、
食欲低下などがある場合に、
すべてを
「ミトコンドリアが弱っているから」
と考えることはおすすめできません。
症状には症状ごとの評価が必要です。
- 強い疲労感が長期間続いている
- 息切れや胸痛を伴う
- 動悸や失神がある
- 原因の分からない体重減少がある
- 発熱などが続いている
- 日常生活が難しいほど体力が低下している
- 新しい神経症状がある
鍼灸は「ミトコンドリア活性化治療」ではありません
鍼灸についても、
「ミトコンドリアを活性化する」
「ATPを増やす」
「免疫力を上げる」
ことを目的とする治療として
一律に説明することはしていません。
たかはし治療院では、
疲労感や睡眠、
首肩こり、
腰痛などのお悩みがある場合には、
まず現在の症状や医療機関での診断内容を確認します。
そのうえで、
身体の状態に合わせて
経絡治療、
YNSA、
身体への鍼、
あん摩マッサージ指圧などを
組み合わせます。
「細胞を治す」のではなく、
現在困っている症状と身体の状態を確認する
ことを基本にしています。
ミトコンドリア・電子についてよくあるご質問
Q. ミトコンドリアが弱ると疲れやすくなりますか?
ミトコンドリアはエネルギー代謝に重要ですが、
疲労感だけからミトコンドリア機能の低下を判断することはできません。
疲労には睡眠、貧血、病気、薬など
さまざまな原因が考えられます。
Q. ミトコンドリアを増やすことはできますか?
特に骨格筋では、
継続的な運動に対する適応として
ミトコンドリアに変化が起こることが知られています。
ただし「数が多ければ多いほど健康」という単純なものではありません。
Q. 電子伝達系では本当に電子が使われていますか?
はい。
ミトコンドリアでATPを産生する過程では、
電子伝達系における電子の受け渡しが重要な役割を持っています。
Q. それなら外から電子を入れればATPが増えるのですか?
電子伝達系で電子が利用されることと、
身体の外から与えた電子がそのままミトコンドリアへ入り、
ATP産生を増やすことは別の話です。
両者を同じ仕組みとして説明することはできません。
Q. 「電子不足」という病気があるのですか?
一般的な臨床医学で、
疲労や免疫低下などを
「全身の電子不足」として診断するものではありません。
Q. イミューノパワーでミトコンドリアは活性化しますか?
機器のコンセプトと、
人に対して臨床的に確認されている効果は
分けて考える必要があります。
ミトコンドリアが活性化し、
病気の回復や免疫機能が高まることを
保証するものとしては紹介していません。
Q. イミューノパワーだけで病気を治療できますか?
いいえ。
医療機関で必要な診断・治療を受けることが優先されます。
治療中の病気がある場合には、
主治医の治療を自己判断で中止・変更しないでください。
Q. 健康のために一番大切なのはミトコンドリアですか?
ミトコンドリアは生命活動に非常に重要ですが、
健康はミトコンドリアだけで決まるものではありません。
運動、食事、睡眠、病気の管理など、
身体全体を考えることが大切です。
まとめ|ミトコンドリアは重要。でも「何でもミトコンドリア」で考えない
ミトコンドリアは、
私たちの多くの細胞の中で
ATP産生に重要な役割を担っています。
また、
ATPを作る過程では
電子伝達系による電子の受け渡しが
重要であることも事実です。
しかし、
「電子が重要」
=「現代人は電子不足」
=「外から電子を入れればATPが増える」
=「疲労や病気が改善する」
とそのままつなげることはできません。
ミトコンドリアについて知ることは、
身体の仕組みを理解するうえでとても興味深いことです。
その一方で、
疲労や体調不良がある時には
「ミトコンドリアの問題」と決めつけず、
必要に応じて原因を確認することも大切です。
健康づくりでは、
無理のない運動、
必要な栄養、
十分な睡眠、
そして必要な医療を適切に利用すること
を基本にしていきましょう。
一つの原因に決めつけず、
現在のお悩みや医療機関での診断内容、
身体の状態を確認しながら、
その日に合わせた鍼灸・あん摩マッサージ指圧を行います。
たかはし治療院
院長 高橋道明




