コラム
老化とは?細胞老化・オートファジー・ファスティングを正しく理解する|健康的に年齢を重ねるために
若返り
「最近、以前より疲れやすくなった」
「肌のしわやたるみが気になってきた」
「若い頃と比べて、身体の回復に時間がかかる気がする」
年齢を重ねると、
身体や肌にさまざまな変化が現れます。
一般的には、
体力の低下、
筋力の変化、
肌のしわやたるみ、
関節の不調などをまとめて
「老化」と表現することがあります。
しかし、
これらは老化に伴ってみられる変化であって、
老化の仕組みそのものを一つの原因だけで説明することはできません。
老化については現在、
細胞老化、
DNAの変化、
ミトコンドリア、
慢性的な炎症、
幹細胞機能、
オートファジーなど、
さまざまな仕組みが研究されています。
この記事では、
「ゾンビ細胞」「オートファジー」「サーチュイン遺伝子」
「ファスティング」といった、
老化についてよく聞く言葉を整理しながら、
現在どのように考えられているのかを分かりやすく解説します。
老化とは何でしょうか?
老化とは、
年齢を重ねるにつれて
身体の構造や機能が少しずつ変化していく現象です。
例えば、
次のような変化を感じることがあります。
- 若い頃より疲れやすくなった
- 筋力や体力が落ちたように感じる
- 肌の乾燥・しわ・たるみが気になる
- 関節の動きが以前と違う
- 傷などの回復に時間がかかるように感じる
- 身体のさまざまな機能が変化してきた
ただし、
これらの変化がすべて「年齢だから仕方がない」
というわけでもありません。
病気、運動不足、栄養状態、睡眠など、
別の原因が関係している場合もあるため、
年齢だけを理由に身体の不調を放置しないこと
も大切です。
老化は「細胞が減ること」だけでは説明できません
以前の記事では、
老化の原因を
「細胞数の減少」と
「細胞機能の低下」の2つとして説明していました。
確かに、
年齢とともに一部の組織では
細胞の数や働きに変化が起こります。
しかし現在の老化研究では、
老化はそれだけではなく、
さまざまな生物学的変化が重なって進むものと考えられています。
- 細胞老化
- DNAや遺伝情報の維持機構の変化
- ミトコンドリア機能の変化
- タンパク質を適切に管理する仕組みの変化
- 慢性的な炎症との関係
- 幹細胞機能の変化
- 細胞間の情報伝達の変化
したがって、
「細胞が減ったから老化する」
という一つの説明だけでは不十分です。
細胞分裂には限界がある?
ヒトの細胞について、
「約50回程度分裂するとそれ以上分裂できなくなる」
という説明を聞いたことがあるかもしれません。
これは培養した一部のヒト細胞で観察された
ヘイフリック限界などをもとにした説明です。
しかし、
身体の中にあるすべての細胞が
同じ回数だけ分裂して死んでいくわけではありません。
細胞の種類によっても性質は大きく異なります。
そのため、
「50回分裂したら細胞が死ぬから、
それが老化の原因」
と単純に考えることはできません。
肌のターンオーバーも年齢とともに変化します
年齢を重ねると、
皮膚の水分保持力やハリ、
弾力などに変化がみられます。
紫外線など長年の外的刺激も
肌の変化に関係します。
そのため、
しわ・たるみなどの見た目の変化も、
単純な「細胞数の減少」だけでなく、
皮膚のさまざまな変化が重なったものと考える必要があります。
「ゾンビ細胞」と呼ばれる老化細胞とは?
近年、
テレビやインターネットなどで
「ゾンビ細胞」という言葉を目にすることがあります。
これは正式な医学用語ではなく、
一般向けに
老化細胞(senescent cells)を
分かりやすく表現した言葉です。
老化細胞とは、
さまざまな刺激によって
細胞分裂を停止した状態になった細胞の一部を指します。
老化細胞は完全に死んだ細胞とは異なり、
身体の中に存在し続ける場合があります。
こうした細胞と、
加齢や慢性的な炎症との関係について
現在も研究が進められています。
老化細胞はすべて「悪い細胞」ではありません
以前の記事では、
老化細胞を
「体内に残って老化を進める悪い細胞」
として説明していました。
しかし、
老化細胞は単純に不要なものというわけではありません。
細胞老化という仕組み自体には、
異常な細胞の増殖を抑えることなど、
身体を守る側面もあります。
老化細胞をすべて除去すれば
若返る、病気を予防できる、
という段階には至っていません。
マクロファージだけが老化細胞を除去するわけではありません
免疫系は、
身体の中で不要になった細胞などの処理に関わっています。
しかし、
「マクロファージがすべての古い細胞を食べ、
年齢とともに食べ残しが増えて老化する」
という単純な仕組みではありません。
免疫系と老化細胞の関係は複雑で、
現在も研究が続けられている分野です。
膝痛・脊柱管狭窄症・認知症・がんを「ゾンビ細胞」で説明しない
加齢はさまざまな病気のリスクと関係します。
しかし、
変形性関節症、
脊柱管狭窄症、
認知症、
がんなどは、
それぞれ異なる仕組みを持つ病気です。
これらを
「老化細胞が残っていることが原因」
と一括して説明することはできません。
オートファジーとは?
オートファジーは、
細胞の中にあるタンパク質や細胞小器官などを分解し、
再利用する仕組みの一つです。
身体にとって不要になったものを処理し、
細胞の状態を維持するために重要な役割を果たしています。
栄養状態などによって
オートファジーの働きが変化することも
基礎研究で知られています。
ただし、
オートファジーとは
「マクロファージがゾンビ細胞を食べる仕組み」
ではありません。
オートファジーは普段から身体の中で働いています
「飢餓状態にならなければ
オートファジーは起こらない」
という説明を目にすることがあります。
しかし、
オートファジーは
絶食した時だけ突然始まる特殊な仕組みではありません。
細胞を維持するための基本的な仕組みとして
普段から働いており、
栄養状態などによって活動が変化します。
ファスティングをすれば「ゾンビ細胞」を除去できる?
以前の記事では、
身体を飢餓状態にすることでオートファジーを活性化し、
老化細胞を除去できるという説明をしていました。
しかし現在、
数日間の断食を行えば
人の老化細胞を除去できることが確立しているわけではありません。
絶食やカロリー制限、
時間制限食などについては
代謝や健康への影響が研究されていますが、
動物実験と人での効果は分けて考える必要があります。
「断食=細胞の若返り」
「ファスティング=病気の予防」
と断定することはできません。
ファスティングは「老化防止のために必須」ではありません
ファスティングを行わなければ
身体の古い細胞が処理されない、
というものではありません。
健康的に年齢を重ねるために、
すべての方が断食をする必要はありません。
むしろ、
年齢や身体の状態によっては
十分なエネルギーやタンパク質を摂取し、
筋肉量を維持することの方が重要になる場合もあります。
数日間の断食には注意が必要です
以前の記事では、
準備期間5日、
ファスティング5日、
回復食5日という体験をご紹介していました。
体重が減ることはありますが、
短期間の体重減少には
水分やグリコーゲンなどの変化も含まれます。
また、
長時間・複数日の断食では、
低血糖、脱水、めまい、体調不良などが起こる可能性があります。
治療中の病気がある方、
薬を服用している方、
高齢の方などが自己判断で長期間の断食を行うことは
おすすめできません。
「サーチュイン遺伝子」は長寿遺伝子?
サーチュインは、
細胞内でさまざまな働きに関係する
タンパク質の一群です。
代謝やストレス応答、
老化との関係について研究されてきました。
そのため一般には、
「長寿遺伝子」
「若返り遺伝子」
などと紹介されることがあります。
しかし、
人でサーチュインを活性化すれば
寿命が延びることが確立しているわけではありません。
カロリー制限と長寿研究は興味深いものの、まだ研究途中です
カロリー制限と寿命の関係については、
さまざまな生物で研究されています。
しかし、
人間が食事量を大きく減らせば
必ず長生きできるという結論ではありません。
栄養不足や筋肉量の低下は
かえって健康上の問題になることもあるため、
「少なく食べれば若返る」
と単純に考えないことが大切です。
幹細胞と老化の関係
幹細胞は、
自分自身を複製する能力や、
さまざまな細胞へ分化する能力を持つ細胞です。
身体の組織を維持するために重要な役割を持っています。
加齢と幹細胞の機能変化との関係についても
多くの研究が行われています。
ただし、
一般的な施術や食品、サプリメントなどによって
「眠っている幹細胞を活性化し、
新しい細胞を作って若返らせる」
と断定できるものではありません。
「細胞再生」「幹細胞活性化」という広告表現には注意
美容や健康の分野では、
「幹細胞」
「成長因子」
「細胞再生」
といった言葉が使われることがあります。
しかし、
化粧品や一般的な施術などで
身体の幹細胞そのものを増やしたり、
臓器や組織を再生したりできることを意味するわけではありません。
「細胞が再生する」「若返る」
という言葉だけでサービスを選ばず、
何が実際に確認されているのかを見ること
が大切です。

健康的に年齢を重ねるためには、特別な若返り法だけでなく身体の状態や日常生活を見直すことも大切です(イメージ)
健康的に年齢を重ねるためにできること
老化そのものを完全に止める方法は現在ありません。
だからといって、
何もできないという意味でもありません。
特別な「若返り方法」よりも、
まず健康維持に役立つ基本的な生活習慣を大切にしましょう。
身体を動かす
年齢を重ねると、
筋肉量や筋力が低下しやすくなります。
ウォーキングなどの有酸素運動に加えて、
可能な範囲で筋力を維持する運動を取り入れることも大切です。
体調や持病がある場合には、
無理のない方法を選びましょう。
十分な栄養をとる
「老化防止のために食べない」
という考え方だけではなく、
年齢に応じて必要な栄養を確保することも重要です。
特に、
高齢になるほど食事量が減り、
タンパク質やエネルギーが不足する方もいます。
極端な食事制限ではなく、
自分の身体に必要な栄養を取ることを基本にしましょう。
睡眠を大切にする
睡眠は、
身体と脳の健康を維持するために重要です。
特別な若返り方法を探す前に、
睡眠時間や生活リズムを見直すことも
健康維持の基本になります。
喫煙を避け、飲酒は適量を考える
喫煙は、
さまざまな病気のリスクと関連します。
健康寿命を考えるうえでは、
「若返り食品」や「若返りプログラム」よりも、
こうした基本的な健康行動を見直すことが重要です。
鍼灸は「若返り治療」ではありません
鍼灸についても、
「細胞を若返らせる」
「幹細胞を活性化する」
「老化を止める」
といった効果を保証することはできません。
一方で、
年齢を重ねる中で
肩こり、腰痛、身体の痛みなどに悩む方が
鍼灸を取り入れることはあります。
たかはし治療院では、
年齢だけをみて施術内容を決めるのではなく、
現在の症状、
医療機関での診断内容、
身体の状態などを確認します。
そのうえで、
経絡治療・YNSA・身体への鍼・
あん摩マッサージ指圧などを
必要に応じて組み合わせています。

鍼灸では症状名や年齢だけでなく、その日の身体の状態を確認しながら施術を考えます(施術イメージ)
老化・オートファジー・ファスティングについてよくあるご質問
Q. 老化の原因は「ゾンビ細胞」ですか?
老化細胞は老化研究で重要なテーマの一つですが、
老化のすべてを老化細胞だけで説明することはできません。
老化には多くの生物学的な変化が関係しています。
Q. ファスティングをすれば老化細胞を除去できますか?
人で数日間の断食を行うことで
老化細胞を除去できることが確立しているわけではありません。
ファスティングとオートファジー、
代謝などについては研究されていますが、
「断食=老化細胞除去」と考えることはできません。
Q. 16時間食べなければオートファジーが始まりますか?
人体で「○時間食べなければオートファジーが始まる」
と一律に決めることはできません。
オートファジー自体は普段から細胞の中で働いています。
Q. サーチュインを活性化すると長生きできますか?
サーチュインと老化・代謝について研究はありますが、
人でサーチュインを活性化すれば寿命が延びることが
確立しているわけではありません。
Q. 幹細胞を活性化すれば若返りますか?
幹細胞は身体の組織維持に重要ですが、
一般的な施術やサプリメントなどで
「眠っている幹細胞を活性化して若返る」
と断定できるものではありません。
Q. ファスティングをしてみてもいいですか?
短時間の食事制限と数日間の断食では身体への影響が異なります。
特に病気の治療中、
薬を服用している、
低体重、高齢などの場合には
自己判断で長期間の断食を行わず、
医師などへ相談してください。
まとめ|老化は一つの原因で起こるものではありません
老化は、
単純に「細胞が減ったこと」
だけで起こる現象ではありません。
細胞老化、
遺伝情報の維持、
ミトコンドリア、
慢性的な炎症、
幹細胞機能など、
さまざまな仕組みが関係すると考えられています。
また、
「ゾンビ細胞」
「オートファジー」
「サーチュイン」
「幹細胞」
といった研究分野には興味深いものがあります。
しかし、
ファスティングをすれば老化細胞が除去される、
細胞が若返る、
病気を予防できる、
寿命が延びると断定することはできません。
健康的に年齢を重ねるためには、
極端な健康法だけに頼るよりも、
運動、栄養、睡眠、禁煙など
基本的な生活習慣を大切にすることが重要です。
身体に痛みや不調がある場合には、
「老化だから仕方がない」と決めつけず、
必要な医療機関での確認や、
身体の状態に合ったケアを考えていきましょう。
肩こり・腰痛など現在のお悩みや
医療機関での診断内容、身体の状態を確認しながら、
その日に合わせた鍼灸・あん摩マッサージ指圧を行います。
たかはし治療院
院長 高橋道明




